若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

精神科 豆知識シリーズ ②精神科医が見落としがちなセロトニン症候群の原因薬剤

セロトニン症候群は抗うつ薬の過量使用で14%、通常使用だと発現率が1%以下と報告されているようです。 

診断基準など細かいことは各自勉強してもらうとして、今回は見落としがちなセロトニン症候群を誘発しうる薬剤について言及しようと思います。

 

①西洋オトギリソウ、セントジョーンズワート

抗うつ作用があると言われていて、精神科医なら知らぬ人はいないでしょう。たまに、外来の患者でこの紅茶?か何かを摂取している患者がいるので気をつけましょう。

セロトニン再取り込み阻害作用、高用量でのモノアミンオキシダーゼ阻害作用(MAO-I)が影響すると考えられている。

 

②デキストロメトルファンメジコン®

咳止めとして処方されるメジコン®。

これはセロトニン再取り込み阻害作用が関係していると考えられています。

恥ずかしながら知らなかった。適当に病棟患者にメジコン®処方して、抗うつ薬飲んでいる人がセロトニン症候群に・・・なんてなったら恐ろしすぎます。

 

③リネゾリド:ザイボックス®

MRSA薬の抗菌薬。ノアミンオキシダーゼ阻害作用(MAO-I)有することが原因と言われている。精神科医が処方することはないだろうが、リエゾン症例でザイボックス®を使用している患者に抗うつ薬を処方してセロトニン症候群に・・・なんてなったら恐ろしすぎます。

 

④トラマドール:トラマール®、ワントラム®、トラムセット®、タペンタドール:タペンタ®

鎮痛薬です。タペンタドールはがん性疼痛に利用されますが、トラマドールは歯痛から何から、頻繁に処方されています。

これらの薬剤はノルアドレナリンセロトニンの再取り込みを阻害します。これが鎮痛作用をもたらしますが、セロトニン症候群の原因ともなります。

鎮痛繋がりで、デュロキセチン:サインバルタ®との併用は慎重に。

 

⑤炭酸リチウム:リーマス®

機序はわかっていないようですが、セロトニン症候群の原因となりえるようです。

 

⑥トリプタン製剤

エルゴタミンなど、様々な薬剤があります。選択的セロトニン受容体作動薬のため、セロトニン症候群の原因となるようです。留意が必要ですね。