若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

精神科 豆知識シリーズ ③バルプロ酸の血中濃度を下げる抗菌薬

さて、これは有名と思いますが、周囲の医者はあまり知らなかったので取り上げておきます。

てんかん薬、気分安定薬として使用されており、精神科薬物治療では無くてはならぬ存在のバルプロ酸

抗生剤の投与でバルプロ酸血中濃度が低下してしまうことに注意が必要です。

 

その抗生剤とはカルバペネム系抗生剤です。

オラペネムとかいう、どーでもいい(と私は個人的に考えている)経口カルバペネムバルプロ酸と併用禁忌です。

 

機序ははっきりしていないようですが、バルプロ酸とカルバペネムの併用でてんかんが再発した症例も報告されています。バルプロ酸血中濃度が下がってしまうようです。

点滴でカルバペネムを使用する場合は、重症の細菌感染症や、耐性菌が出現しカルバペネム系抗菌薬しか使用できないというケースが多いでしょう。

極力カルバペネムを避けつつ、どうしようもない場合は別の抗てんかん薬を用いて対応するなどが現実的でしょうか?

気分安定薬として使用している場合は、一時的に血中濃度が低下しても大きな問題はなさそうに思えます。点滴使用するってことは入院中だろうし、仮に精神症状が出始めても、手を付けられなくなる程激しくなる前に対応できるでしょう。