若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

官能的評価シリーズ 前作よりも新しい薬が! ★精神科のくすりを語ろう その2 患者による官能的評価の新たな展開

★熊木哲夫先生

・精神科のくすりを語ろう その2 患者による官能的評価の新たな展開
 
官能的評価シリーズです。出版は2015年と比較的最近であり、オランザピンやアリピプラゾールに関しても扱われています。

 

 

 こちらが一作目です。

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官能的評価というのは、大きく分けて3種類あると私は考えています。
①服薬体験をした人(精神科の患者さんが主)によるもの
②投薬体験をした人(精神科医が主)によるもの
③服薬・投薬をともに体験した人(自主服薬を行う精神科医)によるもの

 これは官能的評価の復習です。

この本では

抗うつ薬(セルトラリン、デュロキセチン、ミルタザピン、エスシタロプラム)
抗不安薬(クロキサゾラム)
第二世代抗精神病薬(クエチアピン、オランザピン、アリピプラゾール)
クロルプロマジン、プレガバリン、クロナゼパム
についての官能的評価が扱われています。
私が特に面白いと感じたのは、抗うつ薬に関しての官能的評価です。
薬理学的にはセロトニンが、ノルアドレナリンが、前頭前野ドパミンがと言った説明がなされます。あくまでセロトニン仮説に基づいた薬剤説明になり、今ひとつピンとこないのが本音です。
私は基本的に抗うつ薬の選択に関しては、副作用、他薬剤との併用に気を付けるくらいのこだわりしかありません。
ただ、私自身に抗うつ薬に対するこだわりがなくとも、内服する患者さんが処方に対して知りたい気持ちはあって当然です。
そういったとき、この官能的評価による薬の服み心地について知っておくことは役に立ちます。他の患者はどのように感じているかなど、医師視点以外の説明方法を持っていくことは患者と信頼関係を築く一つの手段となります。
官能的評価シリーズは精神科医としての引き出しを増やすことができる貴重な本だと思います。