若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

精神科 豆知識シリーズ ①ロナセンテープとグレープフルーツジュース

書評だけだと話題が持たないので、私が面白いと思う精神科豆知識をどんどん書き連ねようと思います。

第一回は最近発売されたロナセンテープについて。(2020年2月26日現在)

通常のブロナンセリン(ロナセン®)との違いで面白い点があったので共有しておきます。

ロナセン®ってCYP3A4で代謝されるのは皆さんご存じだと思います。

そのため、CYP3A4の代謝に影響を与える薬と相互作用があるわけですね。

ロナセン®もロナセンテープもクラリスロマイシンなどのCYP3A4阻害作用のある薬剤とは併用注意になっています、血中濃度が上昇してしまうからですね。

しかし、グレープフルーツジュースロナセン®は注意ですが、ロナセンテープでは注意が必要ありません。

皆さん、この理由はご存じでしょうか?

 

 

グレープフルーツジュースはCYP3A4の阻害作用を有するフラノクマリン系の物質を含有しています。ジュースは濃縮還元するから、含有量が多くなるともいわれています。

さて、内服では注意が必要、テープでは問題なしというのはどういった理由でしょうか?

これは、フラノクマリンがCYP3A4を阻害する部位に理由があります。

基本的にCYPの代謝は肝臓で行われる印象があるのではないでしょうか?私もそうでした。

しかし、実際のところ、フラノクマリンがCYP3A4を阻害するのは小腸なんです!!

小腸で吸収される前にCYP3A4で一部代謝されるらしく、グレープフルーツジュースはその代謝を阻害するために血中濃度が上昇するとのことでした。

はい、おもしろいですね!

 

ロナセンテープは貼付剤なので、小腸での代謝の影響は受けずに抗精神病作用を発揮します。そのため、グレープフルーツジュースの影響を気にせずに使用できるというわけですね。

この知識がどこかで役に立つかはわかりませんが、非常におもしろい話だと思います。

是非、研修医の指導で場を盛り上げてください!