若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

女性の複雑な精神症状、月経前症候群や月経前不快気分障害を学べる本

★武谷雄二先生
PMS(月経前症候群)正しい知識をもつために
 
別にこの本じゃなくてもいいんです!が、精神科医月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)についての知識は必須です。
「生理が精神症状と関係するとか知っとるわい!」という先生が多いと思いますが、実際には結構見逃されています。
境界性人格障害統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害などなど、様々な病院でいろいろな診断を受けてきた女性を診たとき、PMSPMDDを鑑別に挙げて適切な介入を行うことはめちゃくちゃ重要です。
 
この方たち、基本的には抗精神病薬気分安定薬といった通常の薬物治療のみでは良くなりません。しかも、対人関係でコミュニケーションエラーを起こしたり、周期的に訪れる精神不調がきっかけで自己効力感が低下したりで、境界性人格障害のように変貌していくケースが多いと感じます。
 
ピルを用いるならドロスピレノンを含有しているヤーズやヤーズフレックスを、月経前に間欠的に、もしくは継続的にSSRIを投与するか、抑肝散や加味逍遙散などを試してみるか、などが治療選択肢に上がります。
私自身、20年以上苦しんでいた精神症状がヤーズで劇的に改善した例や、気分の変動はあるものの気分安定薬があまり効果的でなかった症例にSSRIの月経前間欠投与で症状緩和が可能だった例を経験しています。
 
この疾患についての知識があれば、複雑な精神症状に抗精神病薬気分安定薬をテンコ盛りにした結果、症状があまり改善せず・・・という経過を辿った後、統合失調症(統合失調う感情障害)、双極性障害、パーソナリティ障害など複数の診断をつけて戦い続けるというケースが減るかもしれません。
 
精神科診療に携わる医師は、この疾患概念を知っていて、適切な治療につなげる必要があると強く思っています。
別にこの本じゃなくても良いですが、PMSPMDDについては、是非一度は勉強してみてください。
 
 
↓他のおすすめの本、おもしろそうなら読んでみてください!