精神科 豆知識シリーズ ⑤喫煙と抗精神病薬 追記2020年3月8日
喫煙が薬物の血中濃度を変化させるということは皆さんご存じでしょう。
これは、煙中に含まれる多環式芳香族炭化水素が肝臓のCYP1A2を誘導するからと考えられています。
多環式芳香族炭化水素ってなんなんだろうか。
オランザピン:ジプレキサ®
アセナピン:シクレスト®
ですね。
シクレスト®は日本ではMARTAに分類されていますが、性質はあまりMARTAぽくない薬剤でしたね。抗コリン作用がなく、糖尿病に禁忌でないのがありがたい薬剤です。
さて、ジプレキサ®は喫煙者ではクリアランスが35%も増加してしまうらしいです。
その結果として、7本ぐらいしか吸っていない人でも血中濃度が半分くらいに低下すると報告されています。
私はこれを聞いたとき、「副流煙だとどうなっていたんだろう?」と疑問に思いました。最近は健康増進法のおかげで精神科病院での喫煙はなくなりましたが、昔の精神科病棟って喫煙量が半端なかったのです。
最近までそういった状況だったので、入院患者にオランザピン内服させてもほとんど聞いてなかったんじゃないか?と思います。
ちなみに、筋注であっても喫煙をしているとクリアランスは増加していたようです。
一方でシクレスト®はどうでしょう。こちらは舌下でなければほぼ効果を発揮できない薬剤です。
そのおかげか、初回通過効果を受けないため、喫煙によって血中濃度が低下するという心配はしなくて良いらしいです。
シクレスト®は喫煙者でも血中濃度は低下しない!というのは覚えていて損はないでしょう。
追記
クロザピン:クロザリル®もCYP1A2により代謝される割合が多いようです。
喫煙すると血中濃度が低下し、禁煙すると血中濃度が上昇します。
禁煙したことで、副作用が出現したクロザリル®の症例報告もあるようです
ラメルテオン:ロゼレム®はフルボキサミンとの併用が禁忌です。フルボキサミンがCYP1A2を強く阻害することが原因ですね。
ロゼレム®は喫煙によって効果が減弱することはないのでしょうか?気になります。