精神科 豆知識シリーズ ⑩併用禁忌 スボレキサントとレンボレキサントの違い
オレキシン/ヒポクレチンは覚醒を維持するのに必要な物質です。
中枢性過眠症に分類されるナルコレプシーは、オレキシンが欠乏することが特徴的な疾患です。
オレキシン受容体を遮断することで睡眠薬として開発された薬剤があります。
スボレキサント:ベルソムラ®
レンボレキサント:デエビゴTM→以下デエビゴ
ベルソムラ®は発売されて数年たちますが、デエビゴは2020年1月23日に承認されたばかりの薬です。
当然、細かい薬理作用に差はありますが、私が思う大きな違いについて記載したいと思います。
それは、併用禁忌に関する項目です。
ベルソムラ®には併用禁忌の薬剤が多数ありました。
それはCYP3A4を強く阻害する薬剤で、ベルソムラ®の血中濃度が上昇してしまうために禁忌となっています。
クラリスロマイシンや、イトラコナゾール、ボリコナゾールなどなどです。
クラリスロマイシンは耳鼻科で気軽に処方されるため注意が必要です。私も外来患者でベルソムラ®を処方していた症例に、耳鼻科から副鼻腔炎に対しクラリスロマイシンを追加処方されて焦った記憶があります。
また、リエゾン患者でベルソムラ®を処方した場合、身体的な状況によっては抗真菌薬が追加投与される可能性があります。
特に、大学病院で免疫抑制剤を内服している症例では、そのような薬剤調整は頻繁に起こりえます。そのため、ベルソムラ®を使いたくても使えないというシチュエーションが結構あります。
一方、デエビゴは減量さえすれば、CYP3A4を強く阻害する薬剤と併用することが可能です。この点がベルソムラ®とデエビゴを使い分ける上で非常に大きなファクターとなると感じています。
あと、これは考えすぎかもしれませんが、ピロリ菌の除菌です。
ピロリ菌の除菌の薬物治療は基本的に、(PPI or P-cab)+アモキシシリン+クラリスロマイシンが用いられます。
外来で継続的にベルソムラ®を処方している人がピロリ菌除菌を行い、薬局で併用薬の確認が漏れてしまった場合・・・。気付かぬうちに併用禁忌を犯してしまう可能性があるということです。これで、何らかの事故が起きたとしたら・・・。
まあ、禁忌ではありませんがデエビゴも減量はしないといけないので、ベルソムラ®のみを過剰に怖がる必要はないのかもしれませんが。