若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

精神科 豆知識シリーズ ⑨エスシタロプラムとCYP2C19

エスシタロプラム:レクサプロ®はQTc延長で禁忌とされていますが、その点以外は使用しやすい薬剤です。

私も頻繁に使用しており、この薬剤が使えなければ・・・。セルトラリンジェイゾロフト®、デュロキセチン:サインバルタ®、ベンラファキシン:イフェクサー®、ミルタザピン:レメロン®・リフレックス®など他にも選択肢はあるのでそこまで困らないか。

と、冗談は置いておきましょう。

 

レクサプロ®は10mgの初期投与量が治療用量であることから使用しやすいとよく言われますが、実はここに落とし穴があります。

レクサプロがCYP2C19によって代謝されることは皆さんご存じでしょう。

では、日本人にCYP2C19のpoor metabolizerがどれくらいいるかを気にしたことはありますか?

ある文献を参考にすると、日本人のCYP2C19のpoor metabolizerは15~20%程度いるのではないかと考えられています。

これらの人ではレクサプロ®のクリアランスが50%以下に低下し、血中濃度が想定以上に上昇してしまうことが知られています。そして、QTc延長の副作用もでやすいのではないか、とも。

 

あくまで私の臨床実感ですが、poor metabolizerかどうかは別として、レクサプロ®って結構5mgでも十分な効果を発揮する症例って多いように思います。

特に、不安を対象とした処方であれば5mgで十分に改善する症例を何例も経験しています。

抗うつ薬を投与する場合、私は副作用で内服中断してしまうことを避けたいと考えています。そのため、レクサプロ®を処方する場合はほぼ全例5mgから投与開始としています。そして、治療効果、有害事象、精神症状を総合的に評価し、10mgに増量する必要があるかを検討します。

精神科薬物治療は急ぐ必要があるケースと急がなくても良いケースがあると私は思います。急がなくて良いケースでは患者のコンプライアンスを高める努力として、より慎重な薬剤投与が望ましいと思います。