精神科 豆知識シリーズ ⑧セロトニンと血小板の凝集の関係
抗うつ薬の添付文書を見ていると、易出血性の副作用があると記載されています。
この理由を皆さんご存じでしょうか?
これは抗うつ薬の薬理作用である、セロトニン再取り込み阻害作用が原因と考えられています。
では、セロトニン再取り込み阻害作用と易出血性にはどのような関係があるのでしょう。
精神科とは全く関係ない分野ですが、血小板について目を向けるとこの理由がわかります。
血小板が止血機能を果たすとき、血小板は凝集する必要があります。
この血小板が凝集する際に、セロトニンの取り込みが行われるようです。
SSRIによるセロトニン再取り込み阻害作用が血小板に作用することで、血小板がセロトニンを取り込めず、血小板の凝集が阻害されてしまうという機序が考えられています。
最近発売された新規の抗うつ薬、SRIMと呼ばれているボルチオキセチン:トリンテリックス®の薬剤情報は皆さんも聞かれたことでしょう。
臨床試験中に頭蓋内出血が起きたことから、有害事象として報告されています。
薬理学的に全く関係のない有害事象であれば、「薬剤を飲んでいる人に偶然起きた」という説明で片付けられます。
しかし、不幸にもセロトニンを強く阻害する薬剤であるトリンテリックス®において頭蓋内出血が起きているため、非常に印象が悪くなっています。
ただ、逆に言えばセロトニン阻害→易出血性を記憶する機会にもなります。私の場合はDIの度に後輩にセロトニンと易出血性の関係について指導しています。