若手精神科医向け 名著 参考書
内科や外科は過去の情報は歴史に埋もれ、最新のエビデンスに基づいた情報が重視されます。
精神科も新薬が発売されているため、薬剤治療に関しては最新の情報が重要でしょう。
しかし一方で、精神医学、患者対応、評価法に関しては、新しい本でなくとも様々な学び、気づきを得ることができます。
今回は私の知っている範囲で名著を提示していきたいと思います。
★中井久夫先生
精神科医で知らない医師はいないだろ!と思っていたら、後期研修医はあまり知らないようでした。精神科志望なら知っておいて欲しいと思います。
・こんなとき私はどうしてきたか
精神科臨床の基本にして極意みたいな本だと思います。繰り返し読むたびに学びがあるスルメ本です。
・看護のための精神医学
「看護できない患者はいない」臨床医として無力感に襲われたとき、それでも患者と対峙する自分を奮い立たせる言葉です。
・精神科治療の覚書
読んだことあると思うんですが、詳細については忘却の彼方です。再度、読み直してから書こうと思います。
追記:少しおさらいをしてみました。この本から得た知識が、今の私の診療の中で生きています。上二つと比較するとちょっと難しめかなと思います。
★神田橋條治先生
言わずと知れた神田橋先生。神経症、パーソナリティ障害に関する記述が優しくて引き込まれます。途中からオカルト要素が強くなってしまいますが・・・、そうでない部分は非常に勉強になりました。オカルト部分、その要素みたいなものは参考になるかもしれません。
・神田橋條治 医学部講義
精神科講義も面白いですが、少し記憶が曖昧。まずは医学部講義押しです。
神田橋先生の講義内容を書き起こした、という本になっています。めちゃくちゃ面白いですね。精神科臨床の息遣いを感じるので、後期研修医、精神科を考えている初期研修医にも読み物としてオススメです。
精神科医としての「やさしさ」が随所にちりばめられている気がします。
・神田橋條治 医学部講義
精神科医の技能は奥が深い。神田橋先生の優れた言語化能力によって、精神科医としての必要技能が書き連ねられています。
繰り返し読むことで精神科医として成熟できるような本となっています。
平易な文章で書かれており読み易いですが、奥深く得るものは非常に多いです。
・追補 精神科面接のコツ
結構前に読んだので詳細は忘れていますが、精神科診療の技を記載した本です。
「技を育む」もおもしろいですが、こちらのほうがより実践的だったような気がします。再度、読み直して感想を書きます。
神田橋先生の本は他にもおもしろいものが色々あるのですが、オカルティックな要素も含まれるので好き嫌いが別れてしまうと思います。
上に挙げたものは比較的読みやすいのでお勧めです。
★成田善弘先生
精神療法に関する本は非常に面白いです。初学者にも読み易く、多くのことを学べます。少し経験を積んでから読み直せば、その時点で必要な知識を再度吸収できるスルメ本です。
・新訂増補 精神療法第一歩
・精神療法の深さ
・精神療法を学ぶ
・新版 精神療法家の仕事
この辺りは重複する内容もあった気はしますが非常にお勧めです。
もともと、精神科の本って心理士さんも対象になっているせいか、内容のわりに安いんですよね。なので、若いうちは自己投資に購入して読書を・・・。
私は「精神療法家の仕事」の「白状する」、「不思議がる」を日常臨床でも使わせていただくことがあります。当たり前ですが、精神科医もただの人間。すべてを見通すこと、患者のすべての面倒を請け負うことはできません。そういったときに、頭に浮かんぶ言葉です。
★原田誠一先生
精神症候学という分野になるのでしょうか?
・精神症状の把握と理解
初学者が精神症状についての勉強をするのに役立ちます。もっとマニアックな本もありますが、まず取っ掛かりとしては本著で頭の中に知識を植え付けるのが良いでしょう。
・意識障害を診わける
絶版のため入手はできません。図書館においてたりしたら借りて読んでみましょう。古い内容ですが、それだけに意識障害について、どのように評価をすればよいか詳細に記載されています。
この中の「軽度の意識障害を診わける方法」というのは、せん妄の診療やその他器質性精神疾患を診療する上で非常に有用です。いくつかの本で引用されているため目にしたことがある人も多いのではないかと思います。
★青木省三先生
上記で紹介した本も改定されてはいますが時代的には一昔前に出版されたものです。
一方で、青木先生の著書は2017年発売と新しく、また過去の名著からの引用もあり非常に興味深い内容になっています。
・こころの病を診るということ 私の伝えたい精神科診療の基本
これは名著です。青木先生が普段どのようなことに気付かい診療しているのかを披露していただけます。内容としては「基本」です。まさに、「精神科診療の基本」です。
この基本は非常に洗練されており、精神科診療の極意ともいうべきものです。
この本を読みながら、私自身も過去の症例などを振り返り反省し、多くのことを学びました。精神科医は基本的な診療態度を学ぶこと自体が難しい科でもあり、こういった極上の「基本」を学ばせてもらえるのは本当にありがたいことだと思います。
他にも著名な先生の本はあると思いますが、まずは初学者向けのラインでブログを書いてみました。上記の本は精神科医を志す人にとっては必読といっても過言ではないと思います。
薬理学など、一般診療で必要な知識も当然勉強する必要はありますが、それ以外にも精神科医としての成長できる何かを身につけたいですね。
その他、超おすすめ本
若いうちの是非読んでほしい!と私も先輩に勧められました。本当にお勧めの超有用な本です。
・メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服
いきづらさを抱える人の理解、援助を行う上で一読を!
・統合失調症のみかた、治療のすすめかた
堅苦しさは抜きに、統合失調症について勉強させてもらいましょう。
ちょっと極端なところもありますが、基本的には日常臨床で非常に役立つエッセンスが散りばめられています。
生活習慣の重要性について、症例提示を交えて学ぶことができます。外来診療で必須の知識です。
・官能的評価シリーズ
「官能的評価」は薬剤に対するイメージ膨らませてくれます。貴重なシリーズです。
・誤診がおこるとき 精神科診断の宿命と使命
タイトルは仰々しいですが、精神科診療についての基本的姿勢が記載されています。
・援助者必携 はじめての精神科
名著ですが、あえてこちらに。その理由は聞かないでください。本の内容は非常に素晴らしいものとなっています。
・気分障害ハンドブック
名著ですが、訳書なのでこちらに。気分障害の勉強に非常にオススメです。
・ポケット版 改定 せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス
精神科医が避けては通れないせん妄臨床。せん妄の原因検索の重要性、薬物治療についての記載が丁寧にされています。
・精神科の薬がわかる本 第4版
初期研修医から後期研修医1年目は、まずこの本を熟読して薬物治療についての勉強をするといいでしょう。当然、この本の全てが正しいわけでも、治療において必要十分な知識が得られるわけでもありませんが、まずはこれくらいの内容から頭に入れると薬物治療への苦手意識も薄れるのではないかと思います。