若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

精神科 豆知識シリーズ ⑫低栄養状態の患者で見かけた不思議な検査値

神経性食思不振症など、極度のるい痩で入院している患者の採血結果で疑問に思っていたことがあります。

極度のるい痩では、おそらく低栄養に伴い骨髄抑制が起きています。

それは、白血球減少(症例では好中球が500近くまで低下した症例も経験があります)、貧血などから、骨髄抑制が起きていると判断できます。

さて、食事摂取量を増加させて低栄養状態を改善させていくと不思議な検査値を目にします。当然、栄養量はRefeeding syndromeが起きないように細心の注意をはらって決定しています。

 

低栄養が少しずつ改善すると貧血も改善傾向となります。そのとき、多くの症例で何故かMCVが110以下ながらも大球性の値を示すのです。

そこで、一般的によく知られている大球性貧血をきたす原因となる、ビタミンB12葉酸の測定を行います。骨髄抑制が改善し、血球が産生されることで相対的に欠乏しているのかなと考えて。しかし、これまた多くの症例で正常値です。

果たして、この回復期にみられるMCVの上昇は何を意味するのか・・・、と悩んでいました。

 

あるとき、検査値の勉強をしていた時に答えに気が付きました。

赤血球が増加するとき、網状赤血球がまずできるというのは皆さんご存じでしょう。

この網状赤血球、大きいんです。つまり、骨髄抑制が解除されることで網状赤血球が増加します。網状赤血球が増加することで、MCVが見かけ上高値をとり、あたかも大球性貧血を思わせる検査値となっていたのですね。

何で読んだかは忘れましたが、網状赤血球の増加だとMCVは110以下でおさまることが多いとかなんとか。

今までの臨床実感とも一致しており非常にすっきりしました。

当然、本当にビタミンB12葉酸が欠乏して大球性貧血を呈している可能性もあるため測定は必要でしょう。それらが正常値で貧血が進行していないときに、網状赤血球が増えているのかなと考えて経過観察することができると思います。

参考にRDWが高値(赤血球の大きさにばらつきがある)となっているかも見ておくと良いかもしれませんね。