若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

平易な言葉で精神症状を教えてくれる ★精神症状の把握と理解

 ★原田憲一先生

 ・精神症状の把握と理解

 

多くの精神科医は、精神疾患、精神症状の不思議さに魅入られて精神科を専攻したのではないでしょうか?

ある程度の臨床経験を積んでもなお、目の前で繰り広げられる様々な精神症状を理解できずに困惑することが多々あります。

その摩訶不思議な精神症状は一筋縄で理解するのは困難です。そのため、精神症状を専門用語で分節化し、一つ一つをコツコツ把握していく必要があります。

精神科臨床でありがちな落とし穴として、「わからないものをわからない」と受け入れられないということがあると思います。

暫定的に診断名を付けるのであれば良いと思います。しかし、自分が理解できない現象を無理やり操作的診断に当てはめて溜飲を下げるというのは問題でしょう。これは、患者にとってもメリット以上にデメリットがあると思います。また、私達精神科医としての成長も止めてしまうでしょう。

こういった「わからない」状況に対峙した時に、目の前で起きている現象を一つずつ分節化し、理解していくことが重要になるのではないでしょうか?

症状から状態像を導き、診断を保留、もしくは鑑別診断を複数念頭に置きながら治療にあたるという態度が臨床医に求められると私は思います。

そういった自身の拠り所を捻出するために、精神症状について学ぶメリットがあると思います。ただ、お堅い難しい本から入ると途中で心が折れてしまうでしょう。

この「精神症状の把握と理解」は、文章は平易で理解し易く、私達のような若手精神科医が食わず嫌いせずに勉強する機会を提供してくれています。

「軽い意識障害」に対する記述など、日常臨床で非常に有用な知見を含んでいます。

まずは手に取り、軽く読み始めてみましょう。精神科の奥深さに触れるきっかけになると思います。