誤診は起きる。誤診を誤診で終わらせないために ★誤診のおこるとき 精神科診断の宿命と使命
★山下格
リンク
・誤診のおこるとき 精神科診断の宿命と使命
タイトルから、誤診、誤診、誤診とぎょっとしますね。
医者にとっては非常に苦しい「誤診」という言葉、それを敢えてタイトルにした本です。
著者の論として、診断は病名を単にラベリングの作業ではないという点が強調されています。
もちろん病名を確定することは大切である。それはこの終わりのない努力のうち不可欠の一部であって、最終的な目標ではない。診断のプロセスは空間的、時間的な広がりをもって動きつづける。その働きは決して一直線には進まない。その誤った動きの一つ一つが、広い意味では誤診と考えてよいものである。少なくとも医師としてはそのくらいの気構えでいなければならない。誤診を重ねて正しい診察を得る~(以下省略)
患者を診察し、鑑別を挙げ、検査を行い、診断する。
その一つ一つの作業が、正しく患者を診療しようとする試みであり、この中で「誤診」は自然と起きるもの。その「誤診」は正しい診断を得るための試行錯誤の過程で生じたものであり、必要なものだということです。
この本では、上記の信念のもと出版されたものとなっています。
精神科医は神田橋先生の言葉を借りれば「徒手空拳」の世界で日々戦っている。バイオマーカなどなく、診断に関しても病歴、患者の様子、周囲の人の話などを聴取した上の総合診断を行う。
常に「自分の診断が間違っているのではないか」と謙虚に臨床を行う姿勢が重要となるのではないかと私は考えています。
「誤診のおこるとき」は粗探しを行う本ではなく、こういった臨床に対する基本姿勢を記した本となっています。
是非、若手精神科医に目を通してもらいたい一冊です。