若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

避けては通れないせん妄診療、理論から実践へ ★ポケット版 改定 せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス

 ・和田健

・ポケット版 改定 せん妄の臨床 リアルワールドプラクティス
 
せん妄は意識障害を背景とし、様々な症状をきたす病態です。
単科精神科病院は外来患者をせん妄と診断し、身体疾患の鑑別目的に内科受診をしてもらうというケースが多いと思います。一方で、リエゾンコンサルテーションがメインとなる総合病院では、せん妄が日常臨床の中心となることが多いでしょう。
 
この本はせん妄に関して、理論編・実践編・実践編に分類し解説しています。
理論編では診断や薬物治療の方針についてなどが詳細に説明されています。患者がせん妄となった場合、家族にどのような説明をする良いか、抗精神病薬を使用する場合の説明についても記載されています。
さらに、患者家族への説明の仕方やフルニトラゼパムミダゾラムを使用するときの注意点、説明方法についても記載があり、非常に実践的な内容となっています。
 
実践編では「せん妄の診断のすすめ方および鑑別診断」を、25症例を元に解説しています。
直接因子、間接因子、促進因子に要素を分類し、対応法、薬剤選択について学べます。読み応えがあり、症例毎に試行トレーニングができます。
 
最後の症例編では、実践編のような症例提示とClinical Questionが提示されています。それを解くことで、せん妄について学んだ知識を確認するという流れです。
 
せん妄の対応は原疾患の治療が一番ですが、あまり理解されていない節があります。薬物治療に向精神薬が用いられることから、なんとなく精神科に任せようと考えられがちな領域です。しかし、せん妄の対応で最も重要となのは、身体領域で変化が起きていないかを確認することです。
この本はそういった視点を持った上でせん妄診療にあたる重要性を教えてくれます。