「生活習慣病としてのうつ病」の実践!精神科プライマリケアの症例対応に目を向ける ★プライマリケアの精神医学 -15症例、その判断と対応
★井原裕先生
「 生活習慣病としてのうつ病」の井原裕先生の症例検討本です。
序章にこの本のすべてが記されています。
この本は、プライマリケア精神医学に関わる皆さんのために、うつ・不安・不眠に対する外来治療の基本技術を説いたものです。
この本の類書と異なる点は、「たった一つのこと」しかかかれていないということです。すなわち、「うつ・不安・不眠を訴える患者さんには、ヘルシーな生活習慣を勧めさえすればよい」それだけです。その「たった一つのこと」こそ、プライマリケア精神医学におけるもっとも正しく、もっとも有力な方法であると私は確信しています。
この本で強調されている生活習慣の指導は、睡眠、アルコール、運動、対人交流などに関する指導とされています。この指導は医師以外の誰にでもできるものですが、やはり医師が行うことに意味があると私も考えます。
外来診療はどうしても時間に制約があり、5分診療など短時間しか患者対応ができないケースが多いです。その時、患者の訴えに対して、とりあえず処方することで対応するという流れがどうしても生まれてしまいます。
患者の生活習慣を正さずに外来診療を継続するということは、患者自身のレジリエンスを機能させないことに他ならないと私は思います。それどころか、悪い生活習慣、例えばアルコール多飲や不適切な睡眠衛生を続けることを暗に促すことになってしまいます。
私達精神科医は処方する権利をもつ、精神科診療で非常に強い立場にいます。当然、薬物治療が必須である症例もありますが、そうでない症例に対し安易に薬剤を処方することのデメリットを認識する必要があります。
精神科医がプライマリケアで「絶対に行うべきこと」について、その一点に重きを置いた本です。
この本に書かれているような生活指導は、薬物療法が必須の疾患においても重要な指導となるため、是非若手の内に身に着けておくと良いのではないかと思います。