若手精神科医の覚書

若手から中堅の精神科医が、精神科初学者の学習に向いた本の紹介をしています。

神戸市神出病院 錦秀会グループ 患者への虐待、あってはならないこと 精神科病院

入院患者を虐待した疑いで、神戸市の神出病院の看護師6名が逮捕されたと聞いた。

精神疾患精神科病院に入院中という環境で虐待された患者、2020年にもなって悲しい限りだ。

精神科の患者は日常生活においても、一般医療においても常に差別される対象だ。これは隠し通せない事実だ、綺麗ごとは通用しない。

私は単科精神科に勤務していたとき、某宗教関連の有名病院(研修病院としても非常に有名)に、「私達は精神疾患のある患者は診ませんし、受け入れません」と患者紹介を断られたことがある。その患者は、元々はその病院からの紹介患者だったにも関わらず、だ。

これ以外にも多くの例がある。ここで全てを挙げる余裕もなければ、私も気持ちも滅入るので一例だけにしておく、

 

とにもかくにも、精神科の患者は周囲からのそういった仕打ちを受けて社会で生きている。そして、社会で生きることすら許されない患者も存在する。それは、精神症状の重さであったり、周囲のサポートが得られなかったりと様々ではあるが。

では、社会で存在できない患者はどうなるのだろう。

答えは簡単で、非医療者、さらに言えば通常の医療者はほとんど関わることはないだろうが、そういった患者は精神科病院にずっと入院しているのだ。

10年どころではない、50年以上精神科病院に入院し続けている患者もいる。

彼ら、彼女らにとって安寧の地は精神科病棟にしかなく、他に行き場がないのだ。

今回の神出病院が地域でどのような役割を果たしている病院なのかは私は知らない。

しかし、超急性期病院であれ、慢性期中心の病院であれ、精神科病院は患者のために存在する場でなければならない。

医療者として、一人の人間として、患者対応の際に不快な感情や堪え難い怒りを感じることはあるだろう。それは転移や逆転移といった誘発された感情として、専門家としてどのように処理していくか、これは精神科診療に関わる医療者であれば絶対に必要なスキルとなる。

しかし、今回の事件はそういった精神科診療の流れとは全く乖離した出来事で、絶対に起きてはいけないことだ。

何が原因で医療者がそのような行動に出てしまったのか、それはまだ判明していない。

この悲痛な事件が令和の時代にも起きてしまったことに目を向け、私達精神科診療に携わる医療者は大きく反省すべき点があるのではないだろうか。

この神出病院で起きた、痛ましく悲痛な事件は他の病院、自分の勤務している病院で起きていないと言い切れるだろうか?

患者の人権に深く関わる精神科診療、私達は常に自分達を律し、道を踏み誤らない様に気をつけねばいけない。